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昨今、利用事例も増えている経理アウトソーシングですが、「社内で経理業務を行うか、外注するか」を判断しかねる企業もあるでしょう。小規模な組織がアウトソーシングの利用を見極めるポイントは、大きく4つあります。
今回は、経理の内製・外注のメリット・デメリットや、アウトソーシングをおすすめしたい組織の基準などを解説します。
目次
社内に担当者を置いて経理業務を行うと、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
自社で経理業務を行うメリットは、以下の通りです。
・ノウハウを蓄積できる
・必要なデータをすぐに確認できる
・機密情報を管理しやすい
・アウトソーシングよりも費用がかからないこともある
担当者が日々の業務を行えば、社内にノウハウを蓄積でき、担当者のスキルアップにもつながります。また、経営者が財務状況を把握しやすく、経営判断に必要なデータの迅速な確認や判断が可能です。さらに、外部に情報を出さないので、機密情報の管理がしやすいのもメリットだといえます。
費用面に関しては、安定して経理担当者を置ければ人件費のみで済むので、アウトソーシングよりも安価な場合もあります。しかし、昇給や残業代の支払い、人員の増加、退職による新規雇用などの発生により、アウトソーシングよりも費用がかかってしまうケースも少なくないでしょう。
経理業務を自社で行うと、以下のようなデメリットが生じるかもしれません。
・初期投資が必要
・人材確保が難しい
・法改正への対応が大変
・属人化、不正リスクがある
新規で経理部門を設ける場合は、雇用や教育のための費用、経理ソフトやシステムの導入・利用料が必要です。また、専門的な知識が必要な経理業務は、組織が求めるスキルを持った人材の確保が難しい場合もあります。採用後も法改正への対応のために教育・研修費用がかかりますし、担当者の負担も大きくなります。
経理担当者が限定されると、業務の進め方やノウハウを理解している人が少ない「属人化」も起こりやすいです。また、内部の人間が経理業務を担当すると、横領や改ざんなどの不正リスクが高まるのもデメリットだといえます。
経理代行業者にアウトソーシングすると、さまざまなメリットが期待できます。ただし、利用前にはデメリットも理解し、納得したうえで決定することが大切です。
経理アウトソーシングを利用するメリットには、以下のようなものがあります。
・品質の担保
・法改正へのスムーズな対応
・生産性向上
・属人化・不正防止
・コスト削減
経理代行を行うのは、経理の知識・経験豊富な人材を抱えた代行業者や税理士事務所、会計事務所などです。プロによる業務はミスがなく、一定の品質を担保できます。経理に関する最新情報もキャッチし、法改正などにもスムーズに対応してくれるでしょう。
現状、経理業務とコア業務を兼任する従業員がいる場合、経理アウトソーシングでコア業務に集中できるようになれば、生産性向上にもつながります。また、前述のような内部経理による属人化や不正のリスクを低減させられるのも、アウトソーシングのメリットです。
さらに、採用や教育にかかるコストを抑えられるので、アウトソーシングのほうが費用を抑えやすいでしょう。
便利な経理アウトソーシングですが、以下のようなデメリットがあることも忘れてはいけません。
・ノウハウを蓄積できない
・情報漏洩リスクが高まる
・希望する対応をしてもらえない可能性がある
業務を外部に任せると、業務に関するノウハウが蓄積されません。また、お金に関する内容や従業員の個人情報など、重要な情報が漏洩するリスクも懸念されます。さらに、依頼したい内容を細かく設定できない業者もあり、理想的な経理アウトソーシングを実現できない可能性もあります。
ただし、委託内容を限定したり、依頼先を慎重に検討したりすることで、こうしたデメリットをできるだけ回避し、希望のアウトソーシングを行うことは可能です。
現状、経理アウトソーシングの利用を迷っている経営者は、どのような基準でアウトソーシングするかどうかを判断すればよいのでしょうか。4つのポイントを紹介します。
まずは、自社に経理担当者を置く場合と、アウトソーシングを利用する場合のコストを比較しましょう。内製は、人件費はもちろん、設備費や研修費、採用コストなども加味してコストを算出します。アウトソーシングは、月額の利用料や管理費、契約期間などの情報が必要です。
より具体的な数字で比較するためにも、アウトソーシングの有無に関わらず、業者に見積もりを依頼するとよいでしょう。
経理業務の遂行にふさわしい人材を確保できている場合は、早急にアウトソーシングを利用する必要はないでしょう。しかし、担当者の退職や業務負担の増加なども考慮すると、小規模な範囲からアウトソーシングを活用していくのがおすすめです。
アウトソーシング先の選定にも時間がかかるので、担当者の退職が決まっている場合は、経理業務が滞りなく行えるような体制を早めに整えましょう。
経理業務に関するマニュアルを用意していたり、研修プログラムが決まっていたりと、新規担当者にスムーズに引き継ぎができる教育体制が整っている場合は、アウトソーシングへの移行を急がなくてもよいかもしれません。採用・教育のコストがかかっても、蓄積したノウハウを生かせる可能性があるからです。
しかし、教育体制が整っていない場合は、ゼロからマニュアルなどを作成するのは大変です。教育担当者や現行の経理担当者の負担を考慮すると、経理アウトソーシングの利用を前向きに検討することをおすすめします。
経理担当者が複数人いる企業や、担当者が1人でも小規模で業務負担が少ないという企業は、すぐにアウトソーシングしなくてもしばらくは問題なく業務を行えるでしょう。
しかし、業務量が多かったり、ほかの業務と兼任していたりする場合は、従業員の負担になります。負担が大きすぎると従業員エンゲージメントの低下、離職率増加などにつながる可能性があるので、快適な労働環境実現のためにも、アウトソーシングで業務負担軽減に努めるのがおすすめです。
「経理アウトソーシングを利用すれば、必ず自社が抱える課題を解決できる」というわけではありません。多くのメリットを実感するためには、次のポイントに注目してアウトソーシング先を選びましょう。
・アウトソーシングの範囲を決める
・業者選びを慎重に行う
・段階的に導入する
・コミュニケーションを大切にする
幅広い経理業務に対応している依頼先を選んでも、すべての業務をアウトソーシングすると費用が高くなってしまいます。自社で行う業務を決めれば、ノウハウも蓄積できます。
また、業者選びの際は複数の候補を挙げ、見積もりを取りましょう。費用だけでなく「どこまでの業務に対応できるか」も同時に確認すると、契約後のミスマッチを防げます。クチコミや実績などにも注目すると、なおよいです。
経理アウトソーシングははじめから広範囲で依頼せず、段階的に導入することも大切です。小規模な依頼からスタートし、「信頼して任せられる」」と判断したら、徐々に委託内容を増やしていくと、費用面での損もありません。
よりよい経理アウトソーシング実現には、コミュニケーションも欠かせません。いくら優秀なアウトソーシング先でも、「必要な情報がない」「ルールがわからない」という状態では、業務に支障を来します。密なコミュニケーションは、アウトソーシングの基本の1つです。
円滑なコミュニケーションが取れるかどうかも、検討時にはぜひ注目してください。
経理アウトソーシングの導入に迷ったら、4つの観点から判断するのがおすすめです。導入を急がなくてよい企業も、自社の希望に可能な限り対応してくれるアウトソーシング先を見つけると、前向きに検討できる可能性があります。
事前のリサーチもしっかり行い、経理アウトソーシングを活用しましょう。
経理に関する知識豊富な税理士が在籍するファーストアソシエイツは、幅広い経理アウトソーシングが可能です。バックオフィス業務の効率化に向けたさまざまなアイデアで、お客様のお悩み解決をサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。