• COLUMN

    • 2026.02.13

    補助金と経理DXの関係とは?採択率を高め、受給後も困らないための実務ガイド

    「補助金を活用して経理をデジタル化したい。でも、申請書類が複雑すぎて手が止まっている」――。
    こうした悩みを抱える中小企業の経営者は少なくありません。

    実は、補助金の申請と経理DXは切り離して考えるものではなく、同時に進めることで相乗効果が生まれる関係にあります。経理DXが進んでいる企業ほど補助金の採択後に必要な事務手続きがスムーズに進み、逆に補助金の活用が経理DXを加速させるきっかけにもなります。

    本記事では、経理BPO(経理業務のアウトソーシング)と税務顧問の両面から中小企業を支援してきた株式会社ファーストアソシエイツが、補助金×経理DXを成功させるための実務ポイントを解説します。

    補助金の審査で「経理体制」が問われている

    補助金の審査員が見ているのは、夢のある事業計画だけではありません。「この会社は本当に計画を実行できるのか」「投資した資金を適切に管理できるのか」という遂行能力と管理体制が重要な評価ポイントです。

    具体的には、以下のような観点で審査されます。

    数値計画の妥当性 ― 投資回収のシミュレーションが、過去の決算数値と整合しているか
    市場性と差別化 ― 提供するサービスや製品に競合との違いがあるか
    実行体制 ― 必要な人材・組織・管理の仕組みが揃っているか

    このうち「数値計画の妥当性」は、日頃から正確な試算表が作成できているかどうかに直結します。紙やExcelで断片的に経理をしている企業では、計画書の数値と実態のズレが起こりやすく、審査でマイナス評価を受けるケースが実務上少なくありません。

    採択後にこそ「経理DX」の真価が問われる

    補助金には「通ればゴール」という誤解がありますが、採択はスタート地点です。入金までには次のような手続きが待っています。

    1.交付申請 ― 採択通知後、正式に交付を受けるための詳細書類を提出
    2.補助事業の実施 ― 計画に沿った支出を行い、すべての証憑を整理
    3.実績報告 ― 銀行通帳のコピー・振込明細・見積書・納品書・請求書の突合
    4.確定検査 ― 事務局による1円単位の支出根拠チェック
    5.補助金の入金 ― すべての手続きが完了して初めて資金が振り込まれる

    ここで問題になるのが、証憑管理の精度です。紙ベースで管理している企業は、事務局からの修正指示が繰り返し入り、入金が大幅に遅れることがあります。最悪の場合、書類不備で補助金が減額されたり、返還を求められるケースもあります。

    一方、クラウド会計や電子帳簿保存に対応した経理体制を構築している企業は、証憑の紐付けがシステム上で完結するため、実績報告がスムーズに進みます。経理DXは採択後のリスクを最小化するための「保険」でもあるのです。

    経理DXに活用できる主な補助金制度

    経理のデジタル化を検討する際、そのシステム導入費用自体が補助金の対象になることは意外と知られていません。以下は2026年時点で活用を検討できる主な制度です。

    デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)

    2026年度よりIT導入補助金から名称変更された制度です。クラウド会計ソフトやインボイス対応システム、経費精算ツールなどの導入費用が対象となります。

    特にインボイス枠は、小規模事業者の場合に導入費用の最大80%が補助される手厚い制度です。GビズIDプライムアカウントの取得やSECURITY ACTION宣言が申請要件となるため、事前準備を早めに進めることが重要です。

    新事業進出・ものづくり補助金

    経理DX単体では活用しにくいものの、新規事業展開に伴うシステム投資の一環として経理基盤の構築を含める設計は可能です。事業計画全体のなかで「管理体制の強化」として位置づけることがポイントです。

    東京都DX推進助成金(地域限定)

    東京都内の中小企業が対象で、助成率は最大3分の2、上限1億円と大型です。ただし、東京都中小企業振興公社の「DX推進支援事業」でアドバイザーの提案書を受けることが申請要件となっており、準備に最低3ヶ月程度を要します。

    実務上の注意点:

     補助金は原則「後払い」です。システム導入費用は一度自社で立て替える必要があるため、つなぎ融資の確保も含めた資金繰り計画が欠かせません。

    「通ればいい」だけの申請代行に注意すべきポイント

    補助金の申請代行を外部に依頼するケースは多いですが、代行業者の選び方を間違えると、採択後に大きなトラブルを招くことがあります。

    よくある失敗パターン

    ① 数値を「盛った」事業計画のリスク
    「着手金無料・完全成功報酬」を強調する一部の業者では、採択率を上げるために実現不可能な売上目標を設定した計画書が作成されることがあります。結果として、実績報告の段階で計画との乖離が大きくなり、補助金が減額されるリスクがあります。

    ② 交付申請・実績報告のサポートがない
    申請書類の作成だけを行い、最も手間のかかる交付申請や実績報告のフォローがない業者も存在します。補助金の事務手続きは、申請よりも採択後のほうが煩雑です。

    ③ 財務の実態を理解していない
    会社の資金繰り状況を把握しないまま大型の設備投資計画を立て、補助金が入金されるまでの資金ショートを引き起こすケースは実務上珍しくありません。

    信頼できる相談先を選ぶための5つの判断基準

    チェック項目確認のポイント
    採択後のサポート範囲交付申請・実績報告・確定検査まで一貫して支援してくれるか
    財務データに基づく提案か試算表や決算書を確認したうえで投資計画を策定しているか
    不採択リスクの説明があるか成功談だけでなく、失敗事例やリスクも共有してくれるか
    経理DXの知見があるか採択後の証憑管理まで見据えた提案ができるか
    つなぎ融資の相談ができるか補助金入金までの資金繰り支援が可能か

    税理士が関与する強み ― 数字の信頼性が採択率を変える

    一般的なコンサルタントと、普段から決算・税務に携わっている税理士では、補助金申請における強みが異なります。

    税理士は顧問先の試算表(直近の月次数値)を日常的に把握しています。このため、事業計画書の数値が過去実績と矛盾しない、精度の高い計画書を作成することが可能です。

    補助金の審査において「数値計画の信頼性」は大きな評価項目です。きれいなプレゼン資料よりも、決算数値に裏付けられた堅実な計画のほうが審査員の信頼を得やすいというのが、現場での実感です。

    ファーストアソシエイツでは、グループ内のファーストパートナーズ会計事務所と連携し、税務・財務データに基づいた事業計画策定から、経理DXの導入設計、採択後の証憑管理支援までをワンストップで対応しています。
    単に補助金の書類を作るのではなく、「この補助金を受けることで5年後のキャッシュフローがどう改善するか」という経営判断のシミュレーションからスタートするのが、私たちのアプローチです。

    まとめ ― 補助金と経理DXは「同時に始める」のが正解

    補助金の申請は、自社の強みを言語化し、将来のビジョンを数字に落とし込む貴重な機会です。
    そして経理DXは、その数字を正確に管理し、採択後の報告業務を確実に遂行するための基盤です。

    この2つを別々の課題として捉えるのではなく、「補助金を活用して経理DXを進め、経理DXの成果で補助金の実績報告を確実にする」という好循環をつくることが、補助金を真の経営支援ツールに変える鍵となります。

    「自社がどの補助金を使えるのかわからない」「今の経理体制で実績報告に耐えられるか不安だ」という方は、ぜひファーストアソシエイツにご相談ください。
    税務と経理の両面から、貴社に最適なプランをご提案します。