COLUMN
昨今注目を浴びる経理アウトソーシングですが、導入に向けた準備を怠ると活用しきれない可能性があります。よりよい運用には導入の流れを把握し、企業が「いま何をするべきか」を考えながら検討することが大切です。
今回は、経理アウトソーシング導入の流れ、活用のための注意点を解説します。
社内の経理業務を外部委託する経理アウトソーシングは、経理のプロに業務を任せることで、コスト削減や不正・人的ミスなどの防止、生産性向上などが期待できるサービスです。「創業したてで経理業務に時間が割けない」「従業員が少なく経理担当を置くのが難しい」「事業拡大に際し経理担当者の負担が増えた」など、さまざまな境遇の企業が、活用によって高い効果を実感できます。
経理アウトソーシングを担うのは、税理士事務所や会計事務所、経理代行会社などです。経理業務のすべてを任せるだけでなく、業務の一部を依頼したり、スポット利用したりと、ニーズに合った契約が可能です。
経理アウトソーシングの導入に際し、「依頼先にゼロから相談すればどうにかなる」と考える企業もあるかもしれませんが、スムーズかつ費用対効果の高い経理アウトソーシングの実現には、事前準備も必要です。
経理アウトソーシング導入までの流れを把握すると、「いま、何をすべきか」が見えてきます。
「なぜ経理アウトソーシングが必要なのか」という目的が明確でないと、運用に失敗する恐れがあります。
まずは、「経理部門にかかるコスト削減」「人材不足」「効率的な経理業務の実現」など、経理アウトソーシング導入の目的が何なのかを明確にしましょう。
目的が決まったら、アウトソーシングする業務を決めるために現状分析を行います。以下の内容を一覧にすると、現状が“見える化”されやすいのでおすすめです。
・業務の項目
・業務の概要
・担当者
・期限
・経理アウトソーシングした際のメリット・デメリット
成果物がある場合には、それも確認します。大まかな項目だけでなく、各担当者が個々で行っている細かな業務も、すべて一覧にしましょう。
現状分析の一覧を参考に、経理アウトソーシングを行う業務を決定します。委託する業務が決まると、どのようなサービスを提供する依頼先を選べばよいかも明確になります。
依頼先選びで失敗しないためにも、現状分析はじっくりと行うことが重要です。
経理アウトソーシングする業務に合った依頼先は、はじめから1社にしぼらず、複数の候補を挙げるのがおすすめです。
インターネットで検索するだけでなく、取引先に紹介してもらうケースも少なくありません。
候補を数社にしぼったら、希望する業務を請け負ってくれるか問い合わせます。ただし、ネット上の情報だけでは信頼性に欠けるため、詳細を伝えるのは控えるようにします。問い合わせ時の対応や、利用者のクチコミなど、さまざまな情報から「さらに深く相談したい」と判断したら、次のステップに進みます。
ここではまだ1社に決めず、複数のアウトソーシング会社から話を聞きます。提案書や見積書を提示してもらったのち、具体的な依頼先を決定しましょう。
経理アウトソーシングを利用する際には、自社の情報をアウトソーシング会社に伝えなければなりません。
しかし複数の会社に相談すると、開示した情報が漏洩するリスクが高まります。よって、相談前には「秘密保持契約」を交わし、重要な情報が危険に晒されることのないよう対策してください。
経理アウトソーシングしたい業務内容を、具体的に相談します。自社が抱える問題や現在の業務フローなども説明すると、アウトソーシング会社は最適なプランを提案しやすくなります。
相談する際には、自社の情報を話すばかりでなく、アウトソーシング会社や担当者の実績も確認するとより安心です。
相談内容をもとに、アウトソーシング会社に提案書と見積書を作成してもらいます。提案書・見積書の内容はもちろん、提出までの期間がどれくらいかかったかも、検討の材料となります。
要望に適した提案であることはもちろん、相談~提案までの過程も総合的に判断し、依頼先を決定しましょう。
現状の業務をそのままアウトソーシングするのは難しく、アウトソーシングに合った形式に業務を変更するのが一般的です。決定した依頼先と相談しながら、どの業務をどのような形で委託するかといった詳細を決定します。
自社だけでは判断できない場合も、実績あるアウトソーシング会社ならアドバイスをくれるので安心です。
業務の詳細がまとまったら、アウトソーシング会社と契約を交わします。
契約期間や業務の範囲、納期などを明確にし、不透明な部分ができるだけないような契約にしましょう。
テスト運用は、経理アウトソーシングを導入することで問題点が生じないかを確認するために必要です。
一部の業務を試験的にアウトソーシングする方法と、アウトソーシング前の方法と並行する方法の主に2つのテスト方法があります。
テスト運用で見られた問題点の改善を行ったら、本番運用です。本番運用後も定期的なミーティングや密なコミュニケーションで、問題点の有無や改善策の相談や、委託内容の見直しをしましょう。
経理アウトソーシングによって多くのメリットを得るためには、導入前の検討が大きなポイントとなります。
準備段階で特に注意したい3点を解説します。
はじめに行う目的の明確化や、経理業務に関する現状分析を疎かにすると、どの業務をアウトソーシングするべきかが曖昧になります。反対に、目的が明確で現状分析も細かくできていれば、費用対効果の高い経理アウトソーシングの実現が可能です。
特に、現状分析は最適なアウトソーシング会社を探すための重要な材料のため、手間や時間がかかっても丁寧に行いましょう。
経理アウトソーシングには当然費用が発生するため、依頼内容は慎重に検討する必要があります。すべての業務を依頼したほうが業務効率化・生産性向上につながる企業もありますが、負担の大きい一部の業務のみを委託したほうが費用を抑えた運用が可能です。
経理業務の洗い出しができれば、経理アウトソーシングするべきか、自社で引き続き行うかが検討しやすくなります。
経理アウトソーシングによって、経理担当者以外の業務を担当する従業員にも影響が及ぶ可能性があります。経理アウトソーシング導入前には、従業員全体に「アウトソーシングする」という事実に加え、業務スケジュールやフローに変更が生じる可能性があることを必ず周知しましょう。
経理担当者以外の理解が得られるよう周知を堅実に行うことも、経理アウトソーシングのよりよい運用につながります。
経理アウトソーシングのよりよい活用には、導入前の準備が大きく関わります。費用対効果の高い経理アウトソーシング実現のためにも、分析や依頼先の選定などは慎重に行いましょ。
経験豊富な税理士が在籍するファーストアソシエイツでは、税務関連の業務にもまたがった支援が可能です。
企業さまのお悩みに寄り添ったサービスをご提供いたしますので、お気軽にご相談ください。