COLUMN

「経理担当が急に休んだだけで、請求書の処理が完全にストップした」
「ベテラン担当者が辞めた途端、数字の根拠を誰も答えられなくなった」
中小企業の経営現場では、こうした声が後を絶ちません。
中小企業庁の調査によれば、従業員30名以下の企業の約6割が、経理業務をわずか1〜2名で運営しています。
「休まれても、辞められても困る」——その状態こそが、会社にとって最大の経営リスクです。
本記事では、経理の属人化が生まれる原因と、担当者が変わっても業務が止まらない仕組みの作り方を、中小企業の実態に即して解説します。
目次

簿記・税務・労務に関する専門知識が必要な経理は、経営者が詳細を把握しにくく「担当者任せ」になりがちです。その結果、担当者以外には手が出せないブラックボックスが生まれます。
ミスなく・期日通りに処理することが最大のミッションである経理では、新しいツールや業務フローの見直しより「今まで通り」が優先されます。独自のExcel管理や非効率なアナログ作業が温存され続けるのはそのためです。
多忙でマニュアルを作る余裕もなく、「自分でやったほうが早い」という状況が属人化をさらに深刻化させます。悪意がなくても、結果として業務が属人化してしまうのが一人経理の構造的な問題です。
| リスク | 具体的な影響 |
|---|---|
| 担当者の不在・離職 | 給与計算・納税・申告が止まり、延滞税・加算税が発生。採用・育成コストという二重の損失も生じる。 |
| チェック機能の欠如 | 入力・承認・振込を一人が担うため、ミスが決算書に直結。架空取引・横領などの不正リスクも深刻で、中小企業における横領の多くは長期間にわたって発覚しないケースが報告されている。 |
| 法令対応の遅れ | インボイス制度・電子帳簿保存法など法改正への対応が後回しになり、気づかないうちに法令違反リスクが蓄積する |
日常業務に追われる「なんとかこなしている」状態では、税理士との連携強化・新ツールの導入といった「攻めの経理」 に時間を割くことができません。
「その業務を知らない人が読んで動ける」レベルの手順書を作成することが第一歩です。月次決算・給与計算・年末調整など、優先度の高い業務から着手し、「まず月1本」のペースで積み上げていくのが現実的です。
LoomなどのPC画面録画ツールを使って操作動画を残すだけでも、引き継ぎ効率は大きく向上します。文章が苦手な担当者でも、動画マニュアルであれば作成のハードルが下がります。
「急に休んだときに一番困る業務」を一つ選び、A4一枚の手順書を作成してみてください。完璧でなくて構いません。担当外の人が見て動けるレベルが目標です。
会計データが担当者の個人PCにのみ保存されている状態は、属人化の典型パターンです。freee・マネーフォワードクラウド・弥生クラウドなどのクラウド会計ソフトへ移行することで、経営者・税理士・担当者がリアルタイムでデータを共有できるようになります。
銀行口座との自動連携により手入力も大幅に減り、ヒューマンエラーの削減にもつながります。
いずれのソフトも30日程度の無料トライアルが利用できます。実際に操作することで、現行業務との差分や移行のイメージが具体化します。
記帳代行(月額2〜5万円程度〜)・社会保険労務士・税理士事務所の経理代行など、定型業務の一部を外部委託することで業務継続性を確保できます。社内担当者は、経営報告・イレギュラー対応など、人が判断すべき業務に集中できるようになります。コスト以上の「安心感」と「業務品質の安定」が得られるのが外部委託の最大のメリットです。
記帳代行・給与計算代行の相場感を把握するだけでも、経営判断は変わります。2〜3社に問い合わせ、コストと業務継続性のバランスを検討しましょう。
取り組む前に、以下の項目を確認しておきましょう。当てはまるほど、失敗しやすいパターンです。
・手順書を作ったら、あとは担当者任せにしている
・クラウド会計を導入したが、運用ルールを決めていない
・外部委託の範囲・納期・報告ルールを契約前に明文化していない
・手順書の更新タイミングをあらかじめ決めていない
・ツールの導入を「属人化解消の完了」だと思っている
一つでも当てはまった場合は要注意です。
ツールや手順書はあくまで手段であり、「誰が・何を・いつ確認するか」という運用ルールをセットで設計しなければ、形だけ整えても属人化は解消されません。取り組みを始める前に、運用まで含めた設計を意識しておきましょう。
外部業者・クラウドツール・手順書を組み合わせることで、少人数でも実質的にチームで経理を処理する体制を構築できます。「一人でこなす」から「仕組みで管理する」への意識転換が鍵です。
| 役割 | 担い手 | ポイント |
|---|---|---|
| 仕訳入力・記帳 | 外部代行 またはクラウド会計の自動連携 | 手入力ゼロを目指す |
| 月次確認・修正 | 社内担当者 | 異常値・未処理のチェックに集中 |
| 給与計算・年末調整 | 社労士 または経理代行 | 法改正対応も含む |
| 月次レポート・経営報告 | 社内担当者(税理士サポートあり) | 経営判断に直結するアウトプット |
| 税務申告 | 顧問税理士 | 申告ミス・節税機会の最適化 |
この体制での社内担当者の役割は、「処理をすべてこなす人」から「全体を管理・確認する人」へと変わります。担当者が変わっても業務が止まらない経理体制を作るには、この役割の再定義が不可欠です。
一人経理の属人化は「担当者の問題」ではなく「仕組みの問題」です。
手順書の整備・クラウド会計の導入・外部リソースの活用、この3つを組み合わせることで、担当者が変わっても止まらない経理体制を構築できます。「手順書を1本だけ書いてみる」「クラウド会計を試してみる」という小さな一歩が、会社を救うことにつながります。
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