COLUMN
繁忙期・閑散期はどのような業種にも存在しますが、サービス業は特に時期による業務負担の大きさが変わります。閑散期にどのようなことをすると、繁忙期の負担を軽減できるのでしょうか。
今回は、サービス業の業務配分について、繁忙期・閑散期という2つの視点からさまざまな情報をお届けします。
目次
繁忙期とは、業務量が多く非常に忙しい時期です。一方の閑散期は、業務量が減少して比較的余裕を持って業務に取り組める時期をいいます。
繁忙期・閑散期は業種や組織によって異なり、たとえば不動産業は、新年度から環境が変わる人の多い1~3月が繁忙期です。また、製造業は年末年始やお盆などの長期休暇の際に、閑散期になるといわれています。
飲食店や旅行代理店などのサービス業は、年末年始やクリスマス、大型連休が繁忙期です。寒さや年末年始後というタイミングが重なる2月や、梅雨時期で外に出る人が減る6月、夏休みが終わった9月は、閑散期になる会社も多いです。
顧客が足を運んでサービスを受けたり、商品を購入したりするサービス業は、「忙しいから」という理由で業務量の調整をするのが難しい業種です。しかし、時間に余裕を持ちやすい閑散期の使い方によって、繁忙期の負担を軽減できる可能性があります。
サービス業は、閑散期にどのようなことをするとよいのでしょうか。
AIにより、さまざまな企業で定型業務の自動化が進んでいます。サービス業も、コア業務である接客は従業員が担当する必要がありますが、定型業務は自動化できます。しかし、繁忙期に新システムを導入したり、システムの整備を行うと業務量がさらに増えてしまいます。システムの導入や整備は、閑散期に行っておくとよいでしょう。
繁忙期に新人スタッフが入ってくると、教育担当者の心身の負担が増えてしまいます。新規採用者は閑散期に採用し、繁忙期にスタッフ同士が連携してスムーズに業務が遂行できるよう、教育を行っておくのがおすすめです。また、既存スタッフへの教育やスキル習得に向けた学びの促進も、閑散期のほうがより効果を高められます。
レイアウト変更や店舗拡大、老朽化に伴うリフォームなどの改装を繁忙期に行うと、内容によっては休業日を設けなければならず、損失につながります。改装工事に向けての打ち合わせや改装内容の検討など、担当者が時間的な制約を受ける場面も多いので、店舗改装も閑散期に行いましょう。
また、備品の点検、不足しているアメニティの補充なども、閑散期にやっておくのがおすすめです。
商品・サービスの見直しのためには、売上データの分析も欠かせません。
多くの時間を必要とする見直し作業も、閑散期に行うとよいことの1つです。売上が芳しくない商品・サービスの改善や撤廃とともに、顧客のニーズに合った新商品・サービスの企画・開発も行うと、繁忙期により多くの売上が期待できます。
過去の繁忙期のデータを参考に、必要な人員数や求めるスキルを明確にし、配置の見直しを行います。閑散期のうちに人材の確保と教育ができれば、繁忙期の負担を軽減できます。また、担当の変更を行う場合も、閑散期なら時間をかけて新しい業務を覚え、ミスの少ない作業の実現が可能です。
小売業・販売業は、閑散期のうちに在庫管理体制の見直しも行いましょう。売上や顧客数の変動などのデータを分析すると、需要を予測できます。これに沿って仕入れ量を決めれば、必要以上の在庫を抱えなくて済みます。正確な分析と予測には一定の時間を要するのも、閑散期に行ったほうがよい理由です。
業務内容を整理し、適切なマニュアルを作成しておくと、繁忙期にも品質を保って業務を遂行できます。マニュアル整備に向けては、まず業務の可視化を行います。現状の業務フローを細かく洗い出し、ムダや課題がないか見直したら、解決策を提示して新たな業務フローを作成します。
この内容をもとに、繁忙期を見据え、効率的に業務を遂行できるようなわかりやすいマニュアルを作成してください。
繁忙期に業務量が増えることで、どのような問題が起こりやすくなるのでしょうか。
・時間外労働の増加
・作業ミスの増加
・離職リスクアップ
・需要が売上につながりにくい
・顧客満足度低下
繁忙期に必要な人員を確保できていないと、既存の従業員の時間外労働が増えます。残業や休日出勤が心身の負担となると、作業中のミスも起こりやすくなります。また、過酷な労働状況が改善されなければ、従業員の離職リスクも高まります。繁忙期に離職者が出ると、ほかの従業員にそのしわ寄せが行き、さらなる離職者を招くという負のスパイラルにも陥りかねません。
さらに、繁忙期に起こりやすい問題として、需要を売上につなげられない可能性が挙げられます。繁忙期は市場の需要が高まっている時期ですが、人材不足などの問題が起こると、市場価値を最大限に生かせません。求められる商品・サービスの提供が間に合わなかったり、多忙により品質が下がったりすると、顧客が不満を覚えるリスクもあります。売上機会を損失しないためにも、閑散期の時間を有効活用する必要があるでしょう。
繁忙期を乗り越えるには、閑散期の使い方を工夫するだけでなく、業務配分や改善も行いましょう。課題解決につながる、4つのアイデアをご紹介します。
まずは、スタッフの役割分担と責任範囲を明確にします。重複や漏れのないように役割を決めることで、個々が迷いなく業務に集中できます。
スムーズな業務遂行には、綿密なコミュニケーションも欠かせません。1日の始まりやスタッフ交代のタイミングなどに短時間のミーティングを行い、その日の流れを全員で共有することも忘れないようにしましょう。
経営の観点から、繁忙期を想定した人員を常に確保するのが難しい企業もあります。繁忙期のみ、人材派遣や短期アルバイトを利用すれば、通年でアルバイトや正社員を雇用するよりもコストを抑えられます。
以前は単純作業のような仕事がメインと考えられていた人材派遣や短期アルバイトですが、最近はスポットバイトの需要も高まっており、自社の求める人材を確保しやすくなっています。ただし、専門性が求められる業務を短期スタッフに頼るのは未だ難しい状況ですので、「どの期間、どのように短期スタッフを雇用するか」は、閑散期に決めておくとよいでしょう。
業務は売上につながる「コア業務」や、組織が健全に機能するためのバックオフィス業務などに分類されます。どちらも重要な業務ですが、売上に直結しないバックオフィス業務をアウトソーシングに頼り、よりよい商品・サービスの提供に集中するのも、繁忙期を乗り切る方法の1つです。
特に、専門性や経験が問われる経理業務は、日々の作業時間も多いため、繁忙期には担当者の大きな負担となります。繁忙期のみ、経理アウトソーシングをスポット利用したり、日頃から経理業務の一部をアウトソーシングしたりと、アウトソーシングの活用方法はさまざまです。税理士事務所が提供する経理アウトソーシングなら、税務や経営に関する支援も同時にしてもらえるでしょう。
業務を効率化・自動化できるITツールは、繁忙期の負担軽減にも役立ちます。たとえば、タスクやプロジェクトを管理するツールがあれば、自分だけでなく、チーム全体のその日のタスクが一目でわかり、当てられた業務に集中できます。
また、情報やノウハウを一元管理できるナレッジ共有ツールを使うと、マニュアルを簡単に確認でき、個々のノウハウを参考にしたより効率的な方法での業務遂行も可能です。
ITツールはさまざまな種類があり、業種や業務内容によって活用できるものが異なります。サービス業で役立つITツールのなかで、「どれが自社の課題解決に役立つか」は、閑散期にじっくり検討するとよいでしょう。
サービス業が繁忙期を乗り切り、需要に見合った利益を出すカギは、閑散期の時間の使い方にあります。過去のデータから繁忙期・閑散期を見極め、閑散期には次の繁忙期に向けてさまざまな行動を起こしましょう。
「経営者を孤独にしない」をモットーに、経理アウトソーシングやバックオフィスの業務改善などのサービスを提供するファーストアソシエイツは、時期ごとの最適な業務配分のご相談も承っております。お客様の悩みに寄り添ったご提案をさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。