COLUMN
コロナ禍を経て、事業環境は大きく変容しました。その中で、自社の強みを活かし、新たな事業展開に挑戦するためのサポートとして注目されている助成金事業があります。
それが、「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」です。
この記事では、「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」がどのような制度なのか、また申請するにはどうしたらいいのか、などについて解説します。
新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業とは、東京都が行っている補助金事業です。
中小企業等が既存の事業を深化、または発展させる取り組みに対し、これが経営基盤の強化につながると認められた場合、必要な経費の一部を助成してくれます。
具体的に、解説をしていきましょう。
新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の目的は、前述した通りポストコロナ等における事業環境変化に対応することのため、コロナ以前と比較して、売上が売上高が減少、もしくは損失を計上している事業者に限られます。
支援対象者
直近決算期の売上高が「2019年の決算期以降いずれかの決算期」と比較して減少している、又は直近決算期において損失を計上している都内中小企業者(個人事業主を含む)
支援対象者に該当していても、さらに下記の申請要件に該当している必要があります。
概要 | |
企業規模 | ・都内の中小企業者※・かつ、大企業が実質的に経営参画していないこと |
所在地 | ・法人の場合は、本店の登記が都内にあること(実施場所が都内の場合は支店でも可)・個人事業者の場合は、納税地が都内であること |
他の助成金 | 同一テーマ・内容で、他から助成を受けていない、また申請していないこと令和6年度において、本事業で一度も交付決定を受けていないこと |
そのほか、税金・その他支払いの滞納がないことや、暴力団とのかかわりがないこと、などが条件に挙げられています。
詳しくは、本事業における募集要項をご覧ください。
※中小企業者とは
中小企業者とは、会社(株式会社、合同会社、合名会社、合資会社、有限会社)及び個人事業者を指します。中小企業者に該当する法人は以下のとおりです。
※業種名は日本標準産業分類より
業種 | 資本金及び従業員 |
製造業、情報通信業(一部はサービス業に該当)、建設業、運輸業、その他 | 3億円以下又は300人以下 |
卸売業 | 1億円以下又は100人以下 |
サービス業 | 5,000 万円以下又は100人以下 |
小売業 | 5,000 万円以下又は50人以下 |
飲食業 | 5,000 万円以下又は50人以下 |
参照:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 募集要項より
助成対象となる取り組みは、下記の2項目に該当している取り組みに限られます。
●既存事業の「深化」:経営基盤の強化に向け、既に営んでいる事業自体の質を高めるための取組
・高性能な機器、設備の導入等による競争力強化の取組
・既存の商品やサービス等の品質向上の取組
・高効率機器、省エネ機器の導入等による生産性の向上の取組
●既存事業の「発展」:経営基盤の強化に向け、既に営んでいる事業を基に、新たな事業展開を図る取組
・新たな商品、サービスの開発
・商品、サービスの新たな提供方法の導入
・その他、既存事業で得た知見等に基づく新たな取組
既存事業の「深化」は、現在営んでいる事業の質を高めるために必要な取り組みを指します。例えば、新たな設備を導入したり、効率があがる機器やサービスの導入などが当てはまるでしょう。
既存事業の「発展」は、現在の事業をもとに新しい事業展開を図る取り組みを指します。例えば、店舗での飲食業のみだった既存事業で、人気メニューをECサイトで販売するなどの新しい取り組みが当てはまります。
「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」の目的は、前述した通りポストコロナ等における事業環境変化に対応することのため、下記の取り組みは対象外です。
・申請者が営んできた事業内容との関連性が薄い、又は全く無い取組
・法令改正への対応など、義務的な取組
・単なる老朽設備の維持更新など、競争力や生産性の向上に寄与しない取組
つまり、既存事業から深化・発展させた事業は対象となりますが、まったくの新規事業は対象外となります。また、単なる老朽化による設備更新や、「深化」「発展」に寄与しないと思われる取り組みも対象にはなりません。
助成の対象となる範囲は非常に広く、自由度の高いサポート事業です。ただし、すべての経費が助成対象になるというわけではなく、申請内容と事業内容との関連性など審査が行われ、判断されます。
●助成対象経費
経費区分 | 備考 | 概要 |
原材料・副資材費 | 製品やサービスの改良等に直接使用し、消費する原材料、副資材、部品等の購入に要する経費 | |
機械装置・工具器具費 | 製品・サービスの改良等に直接使用する機械装置・工具器具等を新たに購入・リース・レンタルする際に要する経費 | |
委託・外注費 | 「市場調査費」だけの申請不可 | 自社内で直接実施することができない製品やサービス改良の一部を外部の事業者等に依頼する経費 |
産業財産権出願・導入費 | 改良等をした製品・サービスに係る特許権、実用新案権、意匠権、商標権の出願に対する費用、もしくは他事業者から譲渡または許諾を受ける際の費用 | |
規格等認証・登録費 | 改良した製品・サービスの規格適合や認証の申請・審査・登録に関する費用、もしくは外部専門家の技術指導、研修を受ける場合の費用 | |
設備等導入費 | 本事業の取組に直接必要な設備・備品等の購入費及びそれらの設置工事等に直接必要な経費 | |
システム等導入費 | 本事業の取組に直接必要なシステム構築、ソフトウェア・ハードウェア導入、クラウド利用等に要する経費 | |
専門家指導費 | 単独申請不可 | 本事業の取組について、外部の専門家から専門技術等の指導・助言を受ける場合に要する経費 |
不動産賃借料 | 本事業の取組に必要な事務所、施設等を新たに借りる場合に要する経費 | |
販売促進費 | 上限額:200万円・単独申請不可 | 助成対象商品の販売促進を行うための宣伝費や広報費 |
その他経費 | 上限額:100万円・単独申請不可 | 本事業の取組に直接必要な経費で、他の経費区分に属さないもの |
特に、販売促進費は、既存事業の販売促進は対象外となり認められません。
詳しくは、本事業における募集要項をご覧ください。
助成限度額は、800万円(千円未満切り捨て)です。
助成対象経費の2/3以内が助成率です。
例えば、助成対象経費が360万円だった場合、助成額は、360×2/3=240万円になります。
一方、800万を超えた申請の場合はどうなるでしょうか。
助成に必要な経費が1,700万円のうち、助成対象経費が1,500万円だったとします。
助成率は、助成対象経費の2/3となりますので、1,000万円が助成対象となりますが、助成の限度額は800万円のため、助成金の申請額は800万円、限度額を超えた分は自己負担となります。
参照:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 募集要項より
助成対象期間は、交付決定日から1年間です。
この期間のうちに契約・実施・支払いがすべて完了する経費が助成の対象です。
発注日や支払日が、対象期間からずれていた場合は、対象外となるのでご注意ください。
例えば、クレジットカード等で支払った場合、銀行口座からの引き落とし日が助成対象期間を超えた場合なども対象外となります。
具体的な申請プロセスについて解説します。
デジタル庁が提供している「Jグランツ」による電子申請受付で、申請が可能です。
Jグランツを利用するには「GビズID」でのアカウント(gBizIDプライム)の取得が必須です。
詳しくは、デジタル庁公式サイトをご覧ください。
申請要件の確認は、ビジネスの状況に応じた計画を踏まえ、スムーズに進めるために不可欠です。
まず、助成金の公式ガイドラインや募集要項を確認することが重要となります。申請書に記載すべき要件や提出書類の詳細についても、正確に理解することが成功に繋がります。
また、要件を確認する際には、直接問い合わせを行うか、地方自治体の窓口を利用する方法も考えられます。
これにより最新の情報を手に入れ、申請に関する不明点が解消しやすくなります。
申請に必要な書類の準備を行いましょう。
申請書や誓約書、履歴事項全部証明書等、必要な書類はさまざまです。準備にも時間がかかることが予想されるので、できるだけ早めに準備をしましょう。
全員が提出する書類 | ・申請様式(申請書)・誓約書 |
法人のみが提出する書類 | ・履歴事項全部証明書・法人事業税納税証明書・法人都民税納税証明書 ・決算書【損益計算書】 |
個人事業主のみが提出する書類 | ・開業届・個人事業税納税証明書・所得税納税証明書 ※非課税の場合・住民税納税証明書 ・住民税非課税証明書 ※非課税の場合・所得税確定申告書【第一表、収支内訳書又は青色申告決算書、メール詳細又は税務署の受付印】 |
申請内容によって提出が必要になる書類 | ・見積書・カタログ等 ・見積書(相見積) ・見積限定理由書 ・図面(設計図、平面図等) |
また、申請書や誓約書は、新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業のHPよりダウンロード可能です。
令和6年度は毎月募集されていますが、予算の都合上申請件数が各月の予定数に達した場合、申請受付期間満了前に募集が締め切りになることがあります。また、下記募集スケジュールはあくまでも予定のため、早期に打ち切りになる可能性もありますので、申請を希望している場合は、早めに取り掛かることをおすすめします。
第6回(済) | 令和6年9月2日から |
第7回(済) | 令和6年10月1日から |
第8回 | 令和6年11月1日から |
第9回 | 令和6年12月2日から |
第10回 | 令和7年1月6日から |
第11回 | 令和7年2月3日から |
第12回 | 令和7年3月3日から |
また、最近の受付は、受付が即締め切られています。
受付期間内の申請であっても、申請額の申請等により予算に達した場合、受理されない場合もありますので、ご注意ください。
第7回に申請した場合、下記のようなスケジュールイメージとなります。
書類審査:令和6年11月
面接審査:令和6年12月3日~11日
※いずれか1日、1時間程度
交付決定日:令和6年12月下旬
アドバイザー派遣: 任意… 交付決定日以降、助成事業者が希望する日
必須… 完了検査とあわせて実施
参照:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 募集要項より
採択率を上げるために、審査の視点を確認しておきましょう。
審査は書類審査と面接がありますが、審査の視点は同一です。
・発展性 … 既存事業の深化・発展に資する取組か
・市場性 … ポストコロナ等における事業環境の変化前後の市場分析は十分か
・実現性 … 取り組むための体制は整っているか
・優秀性 … 事業者としての創意工夫、今後の展望はあるか
・自己分析力…自社の状況を適切に理解しているか
参照:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 募集要項より
まず、書類審査で一定の水準を満たしているかどうかが審査されます。一定の水準を満たしている場合は、面接日程・実施場所がメールにて通知され、専門家と対面面接が実施されます。
現在のところ、採択率や、採択結果・採択事例等の情報は公表されていませんが、競争率は高めと言われています。
事前にしっかりと戦略を練り、専門家に相談したほうが、採択率はあがるでしょう。
新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業は、始まったばかりの新規事業です。申請経験をもつ人は少ないのが実情でしょう。
そのため、あまり情報が出揃っていない現時点においては、情報が集まりやすいのが支援をしたことがある補助金の申請経験のある申請代行サービスです。
これまで、東京都中小企業振興公社の助成金申請経験のある専門家であれば、的確なアドバイスを行えることでしょう。
現段階において、採択事例や傾向が分からないので、対策が立てにくいですよね。
しかし、審査の基準は公表されています。
この審査基準から、事業計画書を正確かつ丁寧に準備しましょう。
ファーストアソシエイツなら、数字に強い税理士や補助金のプロがお客様の事業計画策定や各種申請をサポートします。
申請を代行するメリットとして、手間と時間を削減することも挙げられます。
申請手続きには、多くの書類作成や、情報の確認が伴い、そこに費やす時間も膨大になります。しかも多くの場合、補助金申請には慣れていないため、担当者の負担は膨大です。
補助金申請を代行することで、事業計画書など重要な事柄に力を注ぐことができます。
補助金の申請は代行サービスを使い、採択率を上げつつ、効率的に臨みましょう。
ファーストアソシエイツなら、補助金が採択された後も、しっかり事業が軌道に乗るまでフォローします。
ぜひお気軽にお問い合わせください。